入園料が50%の確率でタダになる!

遊園地などのレジャー施設に行って入園料を払う時、次のようなゲームがあったら、あなたはどちらを選びますか?

  1. そのまま正規料金の入園料1,000円を払う。
  2. コインを投げて表が出れば入園料は無料、裏が出れば2,000円の入園料を払う。

さて......

 

 

あなたは、どちらを選びましたか?

たぶん2番を選んだのではないでしょうか?

 

2.コインを投げて表が出れば入園料は無料、裏が出れば2,000円の入園料を払う。


ではアンケート回答の謝礼として、次のような場合はどうでしょうか?

  1. 回答すれば無条件で1,000円もらえる。
  2. コインを投げて表が出れば2,000円もらえる、裏が出れば謝礼は0円。

さて......

 

 

あなたは、どちらを選びましたか?

たぶん1番を選んだことでしょう!

 

1.回答すれば無条件で1,000円もらえる。


 

そんなの、常識ある人間だったら当たり前でしょ!

 

きっと、あなたはそう思ったことと思います。

でも、確率の期待値をちょっと考えてみて下さい。

 

入園料の場合、元々支払う金額が1,000円であれば、2番を選択しても50%の確率なので期待値は1,000円です。

アンケート謝礼に関しても、2番を選択しても期待値は1,000円です。

 

つまり、入園料にしてもアンケート謝礼にしても共に期待値の金額は1,000円で、1番を選んでも2番を選んでも理論的には同じです。しかし、何故か人間は損すると感じる選択には敏感で、直感的になるべく損しないと思われる方を選びます。

この理由は、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授が行動経済学の基礎になった「プロスペクト理論」で、人間には「損失回避性」と言うものがあり、損することはなるべく回避したいと言う性質を持っているからと説明しています。

 

この例で言うと、

  • 入園料のように元々出ていくお金(損するお金)に対しては「できれば取り返したい(損失を回避したい)」と言う思いから多くの人は2番を選ぶ。
  • アンケート謝礼のように入ってくるお金(得するお金)に対しては、0円(損失)になる確率は50%と高いので、損失を回避しようとして1番を選ぶ。

 

であれば......

 

この考えに基いて、入園料の支払い時にこのゲームをやると、面白がってやってくる来園者が増えるのではないかと思った次第です。全入園者を対象にしてしまうと、いつでもゲームできるからそのうち行ってみようと考える人が増えてしまうので、毎土日祝日限定で先着100名とかで試験的にやってみる価値があるのではないでしょうか?

 

そんな危険なゲーム、出来るはずないでしょ!!!

 

あなたはそう思いましたか?

 

先程の期待値をもう一度考えてみて下さい。

ゲームをしないで100名のお客様が来園した場合は、1,000円×100名=100,000円の売り上げです。

では、ゲームをして100名全員が2番を選択したとすると、2,000円払う確率は50%なので、50名の人が2,000円払い合計で100,000円となり、ゲームをしない場合と同等で理論的には園の経営者は損をしないことになります。

 

さらに、顧客満足度に着目すると、いきなり入園料2,000円を払わされたお客様は一気に落ち込んでしまうかもしれないので、救済策として1枚100円のクーポン券10枚を差し上げれば、金銭的支出は1,000円となるので、どうにかご納得頂けるのではないかと思います。

さらに大盤振る舞いとして、入園料無料になったお客様にも同様のクーポン券を差し上げれば、満足度は一気に上るのではないかと思います。

ここでのクーポンの前提は、園内の売店は園が経営していると仮定します。

 

無料の入園者にもクーポン券をあげる必要があるのか?

 

ここにもポイントがあります。

数年前、マクドナルドが朝に限りコーヒーを無料で配るというキャンペーンをやっていたことを覚えていますか? お店に無料コーヒーだけを貰いに来たお客様に対しても、愛想よくタダでコーヒーを配っていたそうです。

 

その結果どうなったか?

結果的に売り上げが上がりました。(どのくらい上がったのか詳しい数字は忘れました。)

これは人間の心理をついた「返報性の法則」を利用した結果です。

人間だれしも、良いことをされたら良いことでお返しをしよう、と言う恩返しの思いが万国共通であると言われています。

マクドナルドのケースでは、毎日毎日タダでコーヒーを貰っているサラリーマンや学生が、いつまでもタダっていうのもカッコ悪いし、今まで何回かタダでコーヒーもらってるから、今日はフライドポテトか何か買ってやるか、と言う気持ちがおきて普段マクドナルドを利用しない人もお金を落としてくれて売り上げに繋がったといいます。

 

さて、先程の遊園地の例では...

 

入園料もタダにしてもらい、その上1,000円分のクーポン券ももらったから何か買ってやるか、と言う気持ちがおこると思いませんか? タダでここまで良くしてくれたので、返報性の法則に従い購買意欲がいつもより高くなり、つい余計な物まで買ってしまう可能性が高くなります。

2,000円払わされたお客様も、お腹が空いてくればこのクーポンを同様に使って、余計なお金を落としてくれることでしょう。

 

 

 

この考え方って、お昼は定食屋で夜は居酒屋になるようなお店に使えると思いませんか?

 

例えば、お昼時は先着10名様に限りこのゲームを適用したらどうでしょう?

  1. 定食の料金をその通り払う。
  2. コインを投げて表が出たらタダ、裏が出たら定食代の2倍の料金を払う。

そして、定食代の2倍を払ったお客様には、夜の居酒屋でのみ使用できる、定食と同程度の金額割引きクーポンをあげる。そして、その他のお客様には、ビール一杯タダのようなクーポン券をあげれば良いと思います。

 

 

こんなことやっているお店は、今まで見たことも聞いたこともありませんが、期間限定でやってみる価値はあると思います。これをやることにより、このことが話題になり、それが口コミで広がり、見込みのお客様が面白がって来店してくる可能性が高まります。また、定食代の2倍を払ったお客様は、この損失を取り返そうと思って、きっとクーポン券を握りしめて夜やってくると思います。そして、色々とお金を落として行ってくれることでしょう。今まで来てくれなかった客様をゲットできる可能性も出てきて、売り上げは上がると思います!

 

 

行動経済学は面白い!

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注意:ここでは行動経済学の参考書に書かれているとおり、コインを投げて勝敗を表裏で決めるように書きましたが、コイントスはとても属人的で、人によっては表裏を明確に分けて出せるとも考えられるため、サイコロを細工して赤い面と白い面だけのサイコロを使うとか、おもちゃのルーレットで赤と黒を使う等、誰がやっても公正な結果が出るものを使った方が良いかもしれません。