本:サービス文明論:「多様性」を支える時代が始まる

BPIAの目からウロコの研究会でお会いした、坪田知巳氏(*)が執筆した表題のKindle版書籍を拝読させていただきました。

本書の冒頭で、筆者はサービス文明を以下のように定義しています。

 

”サ ービス文明とは 、特定のお客様へのサ ービスにより 、感謝 (対価を含む )を得て 、その繰り返しで信頼を醸成していく社会である 。産業革命以降の工業文明が不特定多数 (匿名 )への商品 ・サ ービスの提供を 「市場での競争 」に委ねたことを反省し 、利己主義 、利益優先の悪夢から脱却することを目指す 。”

 

本書は、だいぶ昔から言われ続けいる『「モノの提供」から「サービスの提供」へ』というシナリオを、歴史的な文明の流れ(狩猟文明→農耕文明→工業文明)の社会背景を説明しながら、今後の文明は『サービス文明』と呼ぶにふさわしい時代が来ると述べています。

サービスの提供は、相手が企業(BtoB)であれ個人(BtoC)であれ、『顧客』ではなく『個客』が対象になります。また、個客に対応するには個客のニーズを知ることが最大の戦略目標になり、さらに個客側も『自己開示』することがいいサービスを受けるための必須条件になります。

ここで難しいのが『自己開示』だと思いますが、今後はサービス提供過程でいかに個客と信頼関係を築き期待に応え『共感価値』を共有するかがポイントになると述べています。

さらにサービスの提供は、個客にサービスを提供した時が始まり(オープン・スタート)で、家電製品の販売のように売っておしまい(オープン・エンド)ではなく、今までのオープン・エンド・ビジネスをオープン・スタート・ビジネスに転換することで、永続的な収益を確保できると述べています。

 

本書ではサービス成功事例、ICTが発達したからこそ成功した企業の例、これからの働きかた、教育のあり方、およびメディアのありかた等にも言及しており、マーケティング観点のみならず現代社会論の内容も含む非常に示唆に富んだ本です。

私の今後の『「モノの提供」から「サービスの提供」へ』をコンサルティングしていくうえで、とても参考になりました。

クレイトン・クリステンセンのイノベーションのジレンマ以来、久しぶりに没頭して一気に読んだ本でもありました。

 

坪田知巳氏(*):アマゾンのサイトから抜粋

メディアデザイナー・京都工芸繊維大学特任教授・総務省地域情報化アドバイザー 

   

 1972年日本経済新聞社入社。産業部記者、『日経コンピュータ』副編集長、産業部デスク、電子メディア局次長、日経デジタルコア事務局代表幹事、「日経地域情報化大賞」実行責任者、日経メディアラボ所長を経て、2009年末定年退職。  

 2003年から2010年3月まで、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究教授。4月から同大学SFC研究所員。2006年から2013年3月まで電子ペーパーコンソーシアム委員長、2007年から総務省・地域情報化アドバイザー。2012年から京都工芸繊維大学特任教授、内閣府地域活性化伝道師。 

 2011年から各地で文章講座を開催。教え子は約400人。 

著書に『2030年 メディアのかたち』『ふるさと再生』『人生は自燃力だ!!』(いずれも講談社)、『マルチメディア組織革命』(東急エージェンシー)。 

 電子書籍『読まない人に読ませる共感文章術』『文章美人になろう』をアマゾンから出版。